有元伸也　西藏より肖像Shiya Arimoto　Portrait of Tibet「写真学校を卒業して間もない二十歳の頃、半年間のインド滞在中に撮影したフィルム全てを盗難されるという悲運に見舞われた。その後、次なるテーマを模索すべく新たな旅を開始した僕は、偶然立ち寄ったネパールのカトマンズで或るチベット人の家族と出会う。巡礼者である彼らと食住を共にするようになってから、彼らの故郷であるチベットをこの目で見たいと思い始めた。しかしその矢先、かねてからの不摂生が祟り肝炎を発症して入院、そしてその検査中に心臓の不調も発覚して急遽帰国の途を余儀なくされる。 　帰国してからというものは、日雇いの肉体労働で旅の資金を蓄え、チベット関連の書籍を読み漁り、チベット語を勉強して次の旅に備える日々が続いた。そうして一年後、思い焦がれたチベットの地を初めて旅した時の感動は今も忘れることがない。様々な偶然や不幸な出来事が重なってチベットに辿り着いたのだが、もしかすると、それらの出来事はチベットに出会うべくしてあったのかもしれないと思えた。 　いちど空っぽになった容器を満たすかのように僕はチベットにのめり込み、気がつけば二十代の人生の大半はチベットと共にあった。」― 有元伸也第三十五回太陽賞受賞作品。状態　カバーにヤケ、イタミ有り。帯に切れ有り。帯裏に汚れ有り。著者　有元伸也発行　Visual Arts判型　296×222mm頁数　111ページ製本　ソフトカバー定価　4000円部数　1000部限定発刊　1999年 初版第1刷